6月定例会 個人質問2016/06/20
6月定例会で、個人質問をいたしました。内容は、「政令指定都市への権限移譲を活かした教育の充実について」です。
政令指定都市への権限移譲を活かした教育の充実について(1)
~ 教育水準の充実をどのように図るか ~
森
ともお
現代社会を取り巻く環境は、ここ10年前と比較して大きく変わってきている。国際化の進展、少子高齢化、所得格差の拡大、情報機器の普及・発展など、挙げればきりがない。それらの影響による価値観の多様化も進んでいる。
大人の社会と同様に、今を生きる子どもたちを取り巻く環境も、多様かつ複雑化している。社会の縮図とも言える「学校」においても、いじめ・不登校など、社会全体で解決しなければならない課題が山積している。
たとえ社会が変わっても、変わらないこと。それは、子どもは親にとって宝であり、地域の宝でもあるということ。子どもは私たちの夢であり、希望そのものだ。そして、親は悩みながらも、わが子の心の声を受け止めようと必死に向き合い、そして人によっては働きながらも、懸命にわが子を育ててみえる。
教師も授業のみならず、様々な事務業務や部活動、生徒指導、校務分掌などを抱えながら、子どもの笑顔を力にかえて、子どもと向き合っている。
そして、多くの地域の方々も、ご自身の時間を地域の子どもたちのために費やし、見守り育ててくださっている。例えば、登校時に、「子どもたちが交通事故にあわないように」と、必ず交差点に立って挨拶をしてみえる方、子ども会やスポーツクラブなど、地域の活動で子どもたちの活躍の場、成長の場をつくってあげたいと、労力を惜しまず活動されている方など、皆さんの周りにも、そんな地域の方がいてくださることと思う。
私たち大人の使命と責任は、「子どもたち一人一人の無限の可能性を最大限に引き出す手助けをすること、そして、一人一人の存在の大切さに自ら気づくように見守り導くことである」と、私は思っている。
平成29年4月の政令指定都市への権限移譲により、義務教育学校教職員の給与負担者が愛知県から名古屋市に変わるとともに、教職員定数の決定等の権限も、本市に移されることは、ご承知のことであると思う。
本件については、昨年9月定例会において「うかい春美」議員が質問された。当時の下田教育長から「平成29年4月の権限移譲後も、教育水準のさらなる充実を図る。名古屋の子どもたちが安心して教育を受けられるように、円滑な権限移譲に向けた準備を進めていく」と、大変力強いご答弁をいただいた。
以上のことを踏まえ、質問をさせていただく。権限移譲まであと残り10か月と、すぐそこに迫ってきている。この機をとらえ、どのような点を活かし、どのように教育水準の充実を図っていくつもりか、教育長の考えをお聞かせいただきたい。
市
教育長
県費負担教職員の指定都市への権限移譲が実施された後には、教職員の定数は本市で決定できるようになり、必要な教職員数の確保に努め、これまで以上に様々な教育課題にも取り組むことが可能になる。それを活かしながら、子どもたちへのきめ細やかな指導を進めることができるものと認識している。そのメリットを活かし、国からの強力なバックアップを得ながら、本市が日本の教育のフロントランナーとなるよう、学校教育の充実に努力していきたいと考えている。
政令指定都市への権限移譲を活かした教育の充実について(2)
~ 「子どもと向き合う時間の確保」の観点から ~
森
ともお
子どもと向き合う時間の確保といった観点から質問をさせていただく。
平成26年6月に公表された「OECD国際教員指導環境調査」では、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は参加国中で最長で、勤務時間の内訳をみると、事務業務や課外活動いわゆる部活動に従事する時間が長いという結果である。
部活動については、昨年の6月定例会における私の質問の要望に沿って、本年度、顧問派遣事業や部活動外部指導者派遣事業の拡充をしていただいたが、まだ十分とは言えず、子どもたちがスポーツや文化等に親しむ場の充実といった観点からも、今後更なる制度の拡充が必要であることを改めて申しておく。
次は、「子どもと向き合う時間の確保のためには、教員の多くの時間を割かなければならない「事務業務」について質問する。
昨年12月に取りまとめられた中央教育審議会の答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」の中で、「教員がより子どもと向き合う時間を増やし、教頭が教員への指導等に取り組むことができるように、教頭や教員が行っている管理的業務や事務的業務に関して、事務職員が更に役割を担うことが効果的である」と提言されている。
このような現状を踏まえ、教育長にお伺いする。権限移譲を機に、学校事務に関する教員と学校事務職員の役割を改めて見直し、学校事務職員の専門性や能力を更に活用することで、教員が子どもと向き合う時間を増やす方策を検討する必要があると考えるがいかがか。考えをお聞かせいただきたい。
市
教育長
中央教育審議会の答申などを踏まえ、これまで以上に、学校事務職員の学校運営への参画等を推進することで、教員が子どもと向き合う時間を確保していきたいと考えている。この実現のため、校長、教頭、教員及び学校事務職員代表者から成る検討会議を来月から開催し、就学援助・教育扶助に関する業務などに関して、学校事務職員の担うべき領域や教員と学校事務職員の協働のあり方について、検討を進めていく。
政令指定都市への権限移譲を活かした教育の充実について(3)
~ 少人数学級、専科等 ~
森
ともお
国の学級編制基準は、小学校1年生のみ35人学級、他学年はすべて40人学級である。さて、本市はというと、小学校1・2年生は30人、中学校1年生のみ35人、他の学年は国に準じて40人となっている。
県内の他の市町をみると、豊田市では、小学校1年生は32人、小学校2・3年生は35人、小学校4年~6年生は35人を超える学年に非常勤講師を配置、中学校は全学年35人である。
他の政令指定都市の一部を紹介する。 静岡市では、全学年35人。 浜松市では、小学校1・2年生は30人。それ以外はすべて35人。 川崎、横浜、相模原市は、小学校1・2年生は35人。それ以外は、手を挙げた学校による研究指定校方式で35人学級である。
先ほど申した通り、今の時代を生きる子どもたちを取り巻く環境が大きく変わり、価値観が多様化するなかで、そもそも1学級40人という学級規模は、私の経験からしても、多くの保護者の皆さんはじめ市民の皆さんからいただく声からしても、多すぎるというのが私の率直な思いだ。
私が、6年生の41人の学級を持っていた当時、仕事を終えて帰る途中、一日を振り返ると、「あ、今日はあの子に話しかけることができなかったな」と反省する日もたびたびあった。私が力不足だったという話といえばそれまでだが、子どもたち一人一人に細やかに対応するためには、やはり少人数学級の拡充をすべきというのが私の強い思いだ。
また、専科教員などをはじめとした人的配置拡充の必要性も強く感じている。今の学校教育に求められているのは、一昔前の一斉指導、画一的な指導ではない。「子どもたち一人一人の異なる個性を尊重しつつ、そのよさや可能性を見つけ、引き出し、伸ばす」ことだ。
とりわけ、教師の専門的な力量が、子どもたちの学力に大きく左右するような教科、例えば、音楽など、子どもたちの可能性を十分に引き出し、伸ばすために、専科教員の配置が不可欠だと思っている。
以上のことを踏まえて教育長に再質問させていただく。「権限移譲を活かした教育の充実」といった観点から、権限移譲後の、「少人数学級の拡充」や「専科教員など人的配置拡充の必要性」に対する考えをお聞かせいただきたい。
もう1点。権限移譲を機に、子どもと向き合う時間の確保といった観点では、「学校事務職員の学校運営への参画等を推進していく」「教員と学校事務職員の協働の在り方について検討を進める」との前向きな答弁をいただいた。
ただ、一方で、学校規模が大きければ大きいほど、事務職員の抱える仕事量は多いのも事実であり、これまでも、学校によっては、教員と事務職員が協働している学校も数多くある。事務さんには、私もずいぶん助けていただいた。しかがって、ご答弁いただいた内容に加えて、学校事務の効率化や体制強化についても検討すべきであると思うが、いかがか。
市
教育長
少人数学級の拡充や専科教員などの人的配置拡充の必要性については、子どもたちへのきめ細やかな指導を進める観点からも、引き続き今日的な教育課題であると認識している。教育委員会としては、権限移譲後は、これまで以上に、時代の変化や学校現場が抱える課題に機動的に対応し、子どもたちの創造性を育む学校教育を目指したいと考えている。
学校事務の業務改善についても、課題であると認識しており、給与等支払い事務の効率化を図るための新たなシステム開発などを行うとともに、体制の強化にも努めたいと考えている。権限移譲を機に、学校現場における教員と学校事務職員の協働をさらに深めることで、なごやの子どもたちが安心して教育を受けられる体制づくりに取り組んでいく。
政令指定都市への権限移譲を活かした教育の充実について(4)
~ 少人数学級についての再要望 ~
森
ともお
少人数学級の拡充や専科教員などの人的配置拡充については、義務教育の教職員の人件費が、三分の一が国庫負担であり、残りが市の負担となることから、本市の予算において、相当の負担がなければ、人的配置の拡充を実現することが困難であることについては、私も理解しているつもりだ。ただ、間違いないことは、これまで県を通して要求してきたものが、市単独で国に対して要求できるようになるということだ。
だからこそ、権限移譲を機に、本市の教育の充実に向け、全校一律というような施策ありきでなく、十分に保護者、市民の皆さんの思いを受け止めた上で施策の充実を図っていただくこと、そして、学校現場の実情に配慮した教職員の配置としていただくことを強く要望させていただく。
事務業務については、「事務の効率化を図るためのシステム開発を行うとともに、体制の強化に努めていく」との前向きなご答弁をいただいた。権限移譲を機に、事務職員同士が、これまで以上に支えあえるような体制などについても検討いただきたいと要望させていただく。
最後に、先ほど申した通り、子どもたちは私たちの夢であり希望である。権限移譲を機に、本市教育が、子どもたちにとって、より充実したものとなるよう、重ねてお願いをし、私の質問を終わらせていただく。